「ファンによる応援広告」から考える 、今の時代に愛される広告とは
東京本社 コミュニケーションデザイン局 船木俊作
2019年後半から、SNSを中心にちらほらと見かけるようになった「応援広告」という言葉。文字通り、“誰かを応援するための広告”であることは明白なのですが、その出稿主はなんと、企業ではなくファンというものが多いのです。
広告は、広告主(クライアント)が費用を捻出し、制作物を媒体枠に掲出していく(広告主=出稿主)のが一般的。一方、今話題のファンによる応援広告は、多数のファンによって共同出資された資金をもとに代表者が広告を出稿。今までになかった新しい出稿形態が誕生したことで、広告業界でも大きな話題と。
ファンによる応援広告。それは、時代の写し鏡。
ファンによる応援広告の資金調達には、クラウドファンディングが使われるパターンが多いです。このように個人が少額で支援(出資)できるサービスを有効活用し、広告という手段を通じて情報発信できるようになったのは、やはり“SNS文化の醸成”が大きいと考えられます。
顔を合わせずとも個人同士が容易につながりを持てるようになったこと。インターネット上で声を発することで、反応がこだまするように返ってくること。このような、非対面かつ遠隔地の“見えないけどつながっている仲間”を実感できるSNS文化の醸成が、応援広告を生み出したと考察できます。
愛される広告と愛されない広告の“差”とは。
ファンによる応援広告は、特定のファンだけに届けられるものではありません。ほかの広告と同様に、不特定多数のあらゆる人の目に触れられます。話題化されるものもあれば、スルーされてしまうものもある。ただ、通常の広告とファンによる応援広告には大きな違いがあります。なんだと思いますか?それは、出稿主です。
広告は一般的に、出稿主である企業の「利」のために実施される手段と考えられてきました。しかし、ファンによる応援広告は、出稿主であるファンたちは、利の追求が目的ではありません。では目的は何か。それは「共感」であると考えられます。
「好き」や「応援したい」という個人の小さくて強い気持ちが、ファン同士の共同出資によって大きくてさらに強い気持ちとなり、応援広告というかたちで発信されていく。そして、直接的な支援者ではないファンがその応援広告に触れたときに共感の輪がさらに広がり、その結果としてSNSで拡散され話題となったり、新聞広告であれば切り抜いて保存され、愛される広告として、より多くの生活者の記憶に残るというわけです。
対して、通常の広告は、出稿主である企業の想いやメッセージと、多くの生活者の心象(インサイト)や事象が合致したときに、はじめて話題化されるのが通説です。今年の新語・流行語大賞にノミネートされた、ラグビーW杯のキャッチコピー「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」がその良い例でしょう。
結局、愛される広告には何が必要?
あらゆる広告が毎日生まれ、消えていく世の中で、愛される広告はごくわずか。私たち広告会社は商品やサービスの魅力を最大限に伝えるべく、“愛される広告”を目指してコミュニケーションやクリエイティブの設計を行っています。しかし、応援広告のような、とてつもない熱量を持ち、ド直球な愛情表現に「これには勝てないよね」と危機感を覚えるのも、紛れもない事実です。
愛される広告を作るためには何が必要なのか―その答えはケースバイケース。つまり、これという正解はありません。この果てなき問いに向き合い続け、広告主に合わせたアンサーを出していくのが、弊社の役目であり、得意とする分野です。
ちょっとしたお悩みでも結構です。ぜひぜひ、お気軽にご相談ください。私たちと一緒に、愛される広告をつくっていきましょう。