コト消費が後押し?強刺激がブームになったわけ
東京本社 コミュニケーションデザイン局 船木俊作
皆さんは最近、「強刺激」なものは食べましたか?そもそも、「強刺激」の食べ物と聞いて、どのような食べ物を思い浮かべるでしょうか?
ハバネロたっぷりの激辛料理、スパイスの効いた激辛カレー――食べた直後に辛さや痛みを感じて涙を流す。その辛さがやみつきになって、時折、無性に強刺激を欲している自分がいる。皆さんも、思い当たる節があるかと思います。
強刺激のルーツは「激辛」にあり?
強刺激のムーブメントは、果たしていつ頃からはじまったのでしょうか。
強刺激の代表格である「激辛」。これは、東京にある煎餅・あられ専門店「神田淡平」が1971年に発売した唐辛子を使った煎餅「激辛唐辛子煎餅」がルーツだと言われています。
その後、じわじわと辛みの強い食品が人気となっていき、1986年の新語・流行語大賞で「激辛」は銀賞を受賞(受賞者は神田淡平)。強刺激の中でも「激辛」という概念と味覚が、大衆化されていきました。
「強炭酸飲料」は現代の強刺激の象徴に
近年、飲料メーカー各社から「強炭酸飲料」が発売されているのはご存じでしょうか?炭酸水は、急激に市場が拡大した飲料のひとつ。2006年~16年の生産量データを比較してみると、この10年間で7倍以上増加していることがわかります。
もともと炭酸水は、リキュールを割るための割り材として広く流通していました。しかし、生活者のライフスタイルの変化から、健康的価値とリフレッシュ効果が得られる“水の替わりに飲む飲料”として、市民権を得ていったのです。
ここで、激辛料理や強炭酸水といった「強刺激」の料理が求められるようになってきた背景を考察していきましょう。
1. 生活者のさらなる健康志向
強炭酸水は、口に含んだときの爽快感だけでなく、便通をスムーズにする作用があったり、疲労回復やダイエットのサポートをしてくれるなど、飲む人にとってさまざまなメリットがあると言われています。
また、激辛料理は想像を超える辛みを体験できるだけでなく、発汗を促すなど、体の毒素を排出してくれるデトックス効果も期待できるそうです。
すなわち、心身ともに健康になりたい、健康志向の生活者が増えていった結果が、この強刺激ブームを後押ししていると考えることができます。
2. 刺激という名の“コト消費”
巷では「モノ」を所有・消費するよりも、「コト」として体験することに重きを置いたマーケティングが主流となっています。
シェアリングエコノミーにはじまる体験型サービス、テクノロジーの進化による無形サービス――これら「コト」サービスが充実してきたのと同時に、食事を通じて得られる「コト」としての刺激を、私たちは無意識のうちに欲しているのかもしれません。
とりわけ食事は、空腹を満たす充実感、味覚を味わう幸福感を体験できる、コト消費の代表格。
そして、強刺激フードは味覚としてのうまみもさることながら、普段体験できないような刺激を味わえる食事、つまり「刺激のあるコト」のひとつとして、生活者に支持されていると推測できます。
これらの生活者ニーズとマッチしたからこそ、強刺激フードが話題を集め、新商品が続々と登場し、さらなる市場拡大に発展しているのです。